厚岸コロニー
厚岸町愛冠および梅香町の2ヶ所に分かれてある。愛冠と梅香町のコロニーは沼や草地を隔てて南北に約600m離れている。愛冠のコロニーは急峻な斜面をもつ狭い谷の中にあり、山の外部からは死角になっていてほとんど見えない。周囲は針広混交林で、営巣木は斜面中腹から尾根にかけて位置している。一方、梅香町のコロニーは町に面した山の尾根付近にある。付近の植生は針広混交林であるが、針葉樹の割合はごくわずかである。ただし、コロニーに隣接してアカマツのまとまった植林がある。また、このコロニーは尾根伝いに約100mの距離を置いてさらに2ヶ所に分かれている。このうち北側のほうは尾根近くの東斜面(斜度約40度)に、また、南側のほうは西向きの沢を囲むように営巣木が配置されている。
2002年12月21日に愛冠のコロニーを調査したところ、ミズナラ6本、シウリザクラ5本、カツラ4本、トドマツ4本、シナノキ2本、ハルニレ1本、不明種2本の6種24本に、計82巣を確認した。コロニー内の低木には、ノリウツギ、エゾニワトコ、アオダモなどが見られた。林床はチシマザサが優占していた。営巣面積は約300m2であった。
1992年11月22日の調査では、トドマツ33本、ミズナラ14本、ウダイカンバ10本、ハルニレ6本、ハリギリ5本、イタヤカエデ2本、不明1本の6種71本に、計131巣を確認している。この年の営巣面積は約6,000m2である。また、1993年11月16日の調査では、78本の営巣木に232巣を確認している。1990年5月2日に松田あおい氏が行った調査では、コロニーから約100m離れた所から約60巣以上を確認している。また、1984年11月22日には釧路市立博物館の橋本正雄氏らが調査を行っており、トドマツ47本、ミズナラ10本、ダケカンバ2本、ハルニレ1本、ハリギリ1本の5種61本に78巣と落巣2個を確認している(橋本 1985)。なお、1984年当時の営巣面積は約6,000m2である。
橋本氏は地元の人の話として、愛冠のコロニーが1970年頃につくられたと報告している(橋本 1985)。その後1990年頃に、コロニーの近くで道路の付け替え工事が行われたため営巣場所が多少移動したが、コロニーそのものは放棄されることもなく現在に至っている。なお、このコロニーは道立自然公園内にある。
一方、2002年12月22日に梅香町のコロニーを調査したところ、ミズナラ45本、カラマツ6本、シラカバ5本、エゾヤマザクラ4本、イタヤカエデ2本、ミズキ1本、オニグルミ1本、不明種1本の7種65本に、合計101巣を確認した。このコロニーはミズナラの優占する植生で、低木にはイタヤカエデ、シラカンバ、トドマツなどが見られた。林床はチシマザサが優占していた。営巣面積は約4,000m2であった。
梅香町にある吉祥寺の住職夫妻によれば、梅香町のコロニーができたのは2002年で、この年の4月初旬に2、30羽が突然飛来して営巣を始めたという。このときのアオサギが愛冠から来たのはほぼ間違いないと思われるが、愛冠を離れた理由については分かっていない。なお、厚岸水鳥博物館の渋谷辰生氏によれば、付近に営巣しているオジロワシが2002年の春から町の方に出てくるようになったので、これが影響しているかもしれないという。
参考文献
橋本正雄 1985 釧路湿原、厚岸町におけるアオサギ営巣地について 釧路市立博物館紀要 第10輯 19-27