釧路動物園コロニー
釧路市山花、釧路市立動物園内の丘陵地にある。コロニーがあるのは丘の上部平坦地で、コロニーの東側が広葉樹の斜面になっている。斜面の下にはタンチョウ飼育用のゲージがあり、そこからは約100m離れている。コロニーのある林はカラマツと広葉樹が混生する植生である。東側は30mほどカラマツ中心の林が続き、広葉樹の沢をはさんで道路に至る。コロニーから道路までは約70mである。コロニーの南側にはカラマツが優占する林、北側は広葉樹中心の植生が続く。なお、コロニーの東側には2002年の台風18号によると思われるカラマツの倒木が多く見られ、幅10mほどの帯状のギャップになっている。
2002年12月17日の調査では、カラマツ30本、ミズナラ28本、シラカンバ11本、ヤチダモ3本、エゾノバッコヤナギ1本の5種73本に、合計113巣を確認した。コロニー内の低木としては、ミズナラ、エゾニワトコ、ハシドイなどがあった。林床はササが優占する他、ホザキシモツケなども見られた。コロニー内には枯れ木が目立った。営巣面積は約2,300m2であった。
1990年5月22日に松田あおい氏が行った調査では、カラマツ17本に使用巣20を確認している。この年の営巣面積は約800m2である。また、1991年12月16日に釧路市立博物館の橋本正雄氏が行った調査では、カラマツ56本に67巣と落巣16個を確認している(橋本ほか 1992)。さらに、1992年12月17日に北海道教育大学釧路校の橋場貴幸氏が行った調査では、79本の営巣木に118巣を確認している(橋場 1993)。
このコロニーは1989年に動物園の職員によって発見されたもので、当時は3巣であったという(橋本ほか 1992)。動物園の井上雅子氏によれば、2002年のコロニーの規模は10年前と比べて4分の1程度になったということである。規模が縮小したことについては、コロニーの東側に道路が造られたのが原因のひとつではないかと推測している。また、ここのアオサギは、タンチョウに与えられた魚を餌として利用していたが、近年タンチョウだけが魚を食べられるように設備を変えており、このこともアオサギの営巣数を減少させる要因になったと推測している。なお、以前は現在の位置より北東に寄ったところで営巣しており、営巣木はほとんどがカラマツだったという。
このコロニーではオジロワシによる卵の補食が報告されている(橋場 1993)。井上氏によると、動物園の近くには昔(おそらく1960年以前)からオジロワシが営巣しているということであるが、同園の志村良治氏によれば、オジロワシの成鳥がアオサギのコロニーを日常的に襲うようになったのはここ2、3年のことだという。また、恩根内ビジターセンターの若山公一氏は、動物園に近い釧路湿原で、飛行中のアオサギ成鳥をオジロワシ成鳥が襲い、地上に下りて食べるのを目撃したという。
参考文献
橋本正雄、加藤春雄、杉山伸一、深沢敬、橋場貴幸 1992 北海道東部、釧路湿原におけるアオサギの営巣についてⅡ 釧路市立博物館紀要 第17輯 37-46
橋場貴幸 1993 アオサギの繁殖生態及び自然教育についての検討 学士論文 北海道教育大学釧路校 119 pp.