平岡コロニー営巣数調査
2010年11月13日、平岡コロニーの営巣数調査を行いました。調査に参加していただいたのは次の方々です。中田さん、荒井さん、祐さん、吉田さん、榎本さん、杉本さん、戸叶さん、三浦さん(以上、平岡どんぐりの森から8名)、平岡公園管理事務所の伊藤さん、酪農大学の学生さんが6名、酪農大学獣医学部の寺岡先生とその学生さん、木下さん、私で総勢19名でした。皆さん、お疲れさまでした。
当日は13時にイオン駐車場に集合、調査の簡単な説明を行った後、13時30分頃から14時45分頃までコロニー内の調査を行いました。調査時は穏やかな天気でさほど寒くもなく、野外調査には良い条件だったように思います。ただ、もう少しカラマツの葉が落ちてすっきりと見渡せたほうがコロニーの大きさをより実感できたのではないかと、その点は少々残念でした。
調査はコロニーを6区画に分け、各区画を2名から3名のチームに別れて巣をカウントしてもらいました。なお、調査に先立って私が行った下準備が十分でなく、区画によって作業量が大幅に異なってしまったことをお詫びします。
さて、調査結果のほうですが、皆さんが現地で感じられたとおり、コロニーの規模は以前に比べずいぶん小さくなったようです。巣の数は合計164巣で、痕跡26個を入れても200に届きません。2002年の調査では266巣が確認されていますから、単純に差し引いて8年で102巣減ったことになります。4割近い減少です。ちなみに、この間の江別の巣数(こちらは実際の営巣数)は、2002年が92巣だったのに対して2010年は169巣と、こちらは8年で77巣増えています(右図参照)。平岡のアオサギの一部が江別へ移ったということでしょうか。
コロニーの面積は6,028m2(最外郭法による)でした。2002年当時は約8,600m2でしたが、面積に関してはいずれも目安ていどの精度しかなく、両年の数値で大小を比較するのは差し控えます。ただし、左の地図を見ても分かるように面積自体はそれほど変わっていないように思います。一方、コロニーの範囲には変化が見られ、前回はコロニーの全体がカラマツ林内に収まっていたのに対し、今回はカラマツの南側に広がる広葉樹林にも範囲が拡大していました。ただし、この広葉樹の部分は木の密度、巣の密度とも低く、面積が広がった割には巣数は多くなっていません。
営巣木は合計148本で、樹種は8種が確認されました(右表参照)。御覧のように全体の4分の3以上がカラマツですが、2002年はミズナラ1本以外は全てカラマツでしたから、今回いかに広葉樹の利用割合が高くなったかが分かると思います。なお、今回利用されていたカラマツ113本のうち10本が枯死または枯れかけであり、トドマツ17本のうち3本が枯死していました。祐さんの話では、以前に比べて枯死木が多くなっているということでした。
平岡コロニーは以前に比べて営巣数が減少したことが明らかとなりました。平岡のアオサギの一部は江別へ移動したのかもしれません。しかし、もしそうだとしても、江別の営巣数はここ数年変化がなく、営巣場所のキャパシティから見てもこれ以上の増加はほとんど見込めないことから、この先、平岡からの江別への移動はほとんど無いと考えて良いでしょう。一方、平岡コロニーは江別にくらべて営巣場所にまだ余裕があり、たとえカラマツの枯損が引き続き進行したとしても、急速に営巣場所が失われることはまず無いと考えられます。これらのことから、今後しばらくの間は平岡、江別両コロニーが同規模の営巣数を保ったまま併存する状況が続く可能性が高いと思います。平岡コロニーは道内の他の主要コロニーと比べて単独ではとくに大規模というわけではありません。しかし、距離の近い江別コロニーと併せて、両コロニーをひとつのコロニーと見なせば、営巣数300数十の巨大コロニーとなります。たぶん、石狩地方ではこの両コロニーが一体となった形で地域の中心的存在として機能しているのだと思います。両コロニーは同じ野幌の母体から生まれた双子の兄弟コロニーです。おそらく、片方だけでは当地域のアオサギ個体群は支えきれません。かと言って、札幌周辺に他の営巣場所を見つけるのは容易なことではありません。野幌が営巣場所として利用できない今、平岡・江別両コロニーの存続は、当地域のアオサギ個体群の保全上、最優先すべき課題なのです。
以上が営巣調査の概要です。ここに書かれていないことで、もし皆さんが現地で他に気付かれた点などありましたらお知らせいただければ幸いです。
なお、今回の調査は寺岡さんの研究用試料の収拾という別の目的もあり、林床に落ちているアオサギの骨や羽の収拾を皆さんにも手伝ってもらいました。わずかな試料しか得られなかったのが残念ですが、今後も試料の採材は続けるそうですので、もしコロニーや餌場などでアオサギのまとまった羽や死体を見つけることがありましたら、寺岡さんか私のほうまで御一報いただけると有り難いです。寺岡さんからは皆さんによろしくお伝え下さいとのことでした。