調査地および調査方法
調査対象地域は北方四島を除く北海道全域とし、コロニー単位で調査を行った。コロニーについては、Matsunaga et al. (2000)の報告に1999年までに道内で確認されたコロニーが網羅されているのでこれを参考にした。また、調査期間中に新たなコロニーの情報が得られた場合には随時調査対象に加えた。このうち所在が明確なコロニーについては全て現地調査を行い、既に消滅しているコロニーについては当時の目撃者や文献等から情報を得た。
調査は繁殖期と非繁殖期に分けて行った。このうち、繁殖期の調査は2002年5月2日より2004年7月14日までの期間に合計101日間行い、非繁殖期の調査は2001年10月22日より2005年2月23日までの期間に合計124日間行った。
繁殖期の調査では、これまでに確認されている繁殖地について、コロニーの位置と営巣の有無の確認を主目的に行い、このうち営巣が確認されたコロニーについては繁殖状況の調査を行った。非繁殖期の調査では、現存コロニーの巣数をカウントするとともに、営巣木の樹高、胸高直径の測定、および樹種の同定を行い、地理、植生、人為的な影響等の営巣環境項目を記録した。なお、樹高は目視により測定した。また、一部のコロニーについては営巣木の分布を地図に落とした。巣数については、非繁殖期に利用の有無を判断することは難しいため、明らかに利用されていないと思われる巣も含め全数をカウントした。落巣については確認できた場合は記録したが、調査時に積雪のある場合も多く、コロニーによって落巣を検出できる精度は一定ではなかった。したがって、付表には参考データとして示したが、結果を検討する際には除外した。また、各コロニーについて実際に利用されている巣の数を推定し、推定営巣数として示した。推定に際しては、繁殖期に行ったコロニー外部からの観察や、過去、繁殖期にコロニーに立ち入って行われた実際の営巣数のカウント結果、および地元の人から得た繁殖状況についての情報などを判断基準とした。したがって、判断基準の精度はコロニーによってかなりのばらつきがある。なお、今回の調査において、巣数のカウント等の調査を非繁殖期に行ったのは、繁殖期にコロニーに立ち入ることによりアオサギの繁殖に悪影響が出るのを防ぐためである。
また、これらの調査に平行して、地元の方々や地域の野生生物に詳しい方々から随時聞き取り調査を行い、各地域におけるアオサギの歴史や、アオサギと人との間に生じている地域特有の問題等の項目について情報を得た。
分析に際しては、これまでの調査(Matsunaga et al. 2000)で、地理的、歴史的に関係の深いコロニー群があることが示唆されていることから、便宜的に11の地域(宗谷地方、網走地方、根室地方、釧路地方、十勝地方、上川地方、留萌地方、石狩・空知地方、胆振・日高地方、後志地方、渡島・檜山地方)に分けた。これは北海道の支庁区分とは地理的に必ずしも一致していない。なお、営巣場所が2km以内の範囲で分散したり移動したりした場合は、全て同一のコロニーとみて分析した。
なお、結果に記載した平均値については全て平均±標準偏差で示した。