鳥獣保護法に関連した答申素案に対する意見提出
12月17日、環境省が策定した「鳥獣の保護及び狩猟の適正化につき講ずべき措置について(答申素案)」に対し意見を提出しました。これは同素案に対して環境省が募集していたパブリックコメントに応じたものです。
今回の答申は将来の鳥獣保護法の改正を見据えたもので、特定鳥獣の捕獲に関する制度面での変更が議論の中心となっています。一見、アオサギとは何の関わりもないように思えますが、有害駆除という点では少なからずアオサギにも影響がある内容です。提出した意見は5点で以下のとおりです。
なお、この答申は中央環境審議会自然環境部会内に設置された鳥獣保護管理のあり方検討小委員会で議論されたもので、議事録等はこちらで見られます。
【該当箇所】全体
【意見内容】「個体群管理」という語の使い方が不適切である。文中の「個体群管理」はすべて「捕獲」、「個体数調整」、「鳥獣管理」のいずれかで置き換え可能。焦点を絞った適確な語を用いるべき。
【理由】「個体群管理」とは鳥獣の個体群に対する人間の恣意的な管理を指すが、答申案ではこの文字通りの意味で使われている箇所は無い。代替語として上に挙げた「捕獲」、「個体数調整」、「鳥獣管理」はカテゴリーの異なる語であり、この順で右の語が左の語を包含する。答申案ではこれら異なるカテゴリーの語が「個体群管理」という語のもとに一緒くたにされているため、文意が極めて不明瞭なものとなっている。そもそも、鳥獣保護法で「個体群管理」と「被害防除」と「生息環境管理」を3本柱のように扱っていることが間違いのもとである。「生息環境管理」は「個体群管理」を行うための一手段に過ぎないのであって、これらは同列に位置づけられるものではない。3つを並べたいのであれば「個体群管理」ではなく「捕獲」と書くべきである。
【該当箇所】全体
【意見内容】捕獲規制の緩和等による一般鳥獣に対する不用な捕獲圧の増加を危惧する。特定鳥獣の積極的な捕獲を推進するのであれば、同時に一般鳥獣を含めた鳥獣全体の保護体制をいっそう充実させるべき。
【理由】今回提示された捕獲に関する改革案は特定鳥獣を対象としたものとみなせるが、必ずしも特定鳥獣に限定しているとはいえない。このため、一般鳥獣も少なからず影響を受ける可能性がある。とくに特定鳥獣ほど被害が大きくないがそれに準じた被害がある鳥獣については、特定鳥獣ほどの関心が払われないまま捕獲推進に伴う弊害のみを被る恐れがある。こうしたことを避けるため制度面での十分なケアが必要である。
【該当箇所】全体
【意見内容】捕獲推進の流れは人の野生動物に対する価値観を大きく変容させかねない。間違った意識を根付かせないためにも、捕獲対象としての鳥獣が命ある存在であることを明記すべき。
【理由】今回の答申は捕獲の推進に重点が置かれており、とくに捕獲専門の事業者の設置を検討するなど、ともすれば捕獲対象鳥獣がモノとみなされる恐れを多分に孕んでいる。動物愛護法では「動物が命ある存在である」という文言が繰り返し現れるが、これは愛護動物に限らず野生鳥獣を含む動物全体に向けられた一般命題として捉えるべきものである。ところが、鳥獣保護法には現在のところこの精神を表現する文言はまったく見当たらない。捕獲制度が間違った方向に暴走することのないよう、保護の精神をしっかりと明示しておくべきである。
【該当箇所】4ページ38-40行目
【意見内容】「鳥獣管理」は極めては汎用性の高い用語であり、特定の鳥獣を対象とした特定の考え方に基づいて行われる行為にこの語を限定するのは不自然であり誤解を招く。鳥獣保護法の条文では「特定鳥獣に対する管理」など対象を明示した表現にすべき。
【理由】上記のとおり。
【該当箇所】10ページ32-34行目
【意見内容】捕獲情報は計画的な管理を行うにあたってもっとも重要な要素のひとつである。特定鳥獣だけでなく一般鳥獣を含む鳥獣全体について機能的で迅速な情報収集を可能にするしくみをつくるべき。
【理由】たとえば普通種のアオサギの場合、都道府県によっては前々年度の捕獲数すら整理できていないところがある(当研究会調べ)。これでは過去の実績を参考に順応的に管理していくなど到底覚束ない。また、一般種の場合は市町村から都道府県、都道府県から国へと情報が伝えられる際に駆除数以外の有用な情報は全て切り捨てられる。捕獲情報を有効に活用するのであれば、その情報が必要であるかどうかにかかわらず、捕獲の実施主体となった自治体が得たものと同じ情報を国、都道府県、市町村で可能な限り共有すべきである。紙ベースではなくクラウド上で市町村から国まで一元管理できるようなシステムを構築すべき。