鳥獣保護法の指針(変更案)に対する意見提出
10月16日、環境省が策定した「鳥獣の保護及び管理を図るための事業を実施するための基本的な指針(変更案)」に対し意見を提出しました。これは同変更案に対して環境省が募集していたパブリックコメントに応じたものです。
今回の指針の変更は鳥獣保護法の改正に伴ってなされるもので、近年、被害がとくに問題視されているシカやイノシシなどの捕獲に関する規定の追加および変更が主となっています。アオサギについては直接関係のありそうな変更点はありませんが、有害鳥獣を対象にした規定変更という点では無視できない変更内容を多数含んでいます。今回提出した意見は以下の3点で、個々の規定に対してではなく、いずれも言葉の定義を問題視したものです。
なお、この変更案は、中央環境審議会自然環境部会内に設置された鳥獣保護管理のあり方検討小委員会で議論されてきたものです。議事録等はこちら(平成26年度第1回〜第3回)で御覧になれます。
【該当箇所】1頁35行目から2頁4行目
【意見内容】「管理」という語の用い方が不適切。第一種管理、第二種管理のような中立的な表現を用いるべき。
【理由】そもそも鳥獣保護法における「管理」という語の定義が問題である。本来、「管理」とは人間が自然に手を加えること全般を示す語で、「保護」は「管理」の一部に過ぎない。「管理」は極めて一般的な語であり、いくら法律上の定義と説明したところでコンセンサスが得られるとは思われない。分ける必要があるのであれば、混乱を招く言葉の使用は避け、第一種、第二種のように中立的な単語を用いて語を定義すべきである。
【該当箇所】1頁35行目から2頁4行目
【意見内容】生息数の減少や生息地の縮小のみを「管理」の手段として定義するのは間違いであり、別の表現に改めるべき。
【理由】生息数や分布域は鳥獣の生息状況を示すひとつの指標に過ぎない。「管理」の目指すところが、「生物多様性の確保、生活環境の保全又は農林水産業の健全な発展を図る」ことであるなら、生息数の減少や生息地の縮小のみを「管理」の手段とみなすべきではない。人への被害の軽減を目標にした場合、種によっては生息数を減少させずとも繁殖地を移動させるなどの方法で対応できる場合がある。生息地についても人との関わりの少ないところに移動すれば、必ずしも被害が拡大するわけではない。生息数を減らし生息地を縮小させること以外に被害軽減の方法が無いような種であれば法の定義も可能であるが、そうであればそのような種に限定して定義すべきであり、すべての鳥獣を含むのであれば、生息数や生息地のみに拘らない一般的な表現に改めるべきである。そもそも鳥獣保護法での定義の仕方が問題であり、指針に同様の間違いを持ち込むべきではない。
【該当箇所】1頁35行目から2頁4行目
【意見内容】適正な水準の生息数、および適正な範囲の生息地という表現は規定が不可能である。別の表現に改めるべき。
【理由】鳥獣保護法での定義が問題であり、少なくとも指針では適切な表現に変えるべきである。生息数や分布というのは、種の生息状況を規定する個別の要素に過ぎず、それら単独では生息状況全体の判断指標にはならない。生息数や分布は他の諸々の要素も含め相互に作用し合っているため、個々の要素のみを取り上げても、それらの要素と生息状況全体の間には必ずしも一対一の対応が見られないからである。目指すべきは生息状況全般を一定の水準以上に保つことであり、個々の要素のみに焦点を当てるべきではない。