3.(3) 駆除数
環境省発表の「鳥獣関係統計」によると、平成8年度のアオサギの駆除数は全国で8羽であったが、その後、一度も減少に転じることなく増加し、平成22年度は3,412羽(注1)に達している(図1)。この値は全国のアオサギの個体数を43,000羽と見積もった場合、約8%に相当する。
アオサギの駆除数は、割合では鳥類全体(467,864羽、平成22年度)の0.7%を占めるに過ぎないが、種別で見ると11番目に多い。一方、アオサギより駆除数が少ない種では、トビとゴイサギがそれぞれ1,000羽台前半で続き、それ以下の種はすべて1,000羽以下となっている。また、アオサギより駆除数の多い10種はドバトとシロガシラ以外はすべて狩猟鳥である。すなわち、アオサギの駆除数は狩猟鳥に比べると少ないが、普通種の中では際だって多いといえる。
平成8年度から平成22年度までの期間で見ると、アオサギは40都道府県で駆除されており、駆除の総数は19,030羽に達する(図2-(1)、付表1)。中でも山形、岡山、広島各県の駆除数が多く、この3県のみで全体の4割を超えている。とりわけ山形県は、同期間中に全体のほぼ2割に当たる3,673羽を駆除し、単年だけで997羽を駆除した年もあるなど突出した駆除数となっている。一方、東京都を除く関東6県と青森県は、この期間中まったく駆除を行っていない。
平成22年度に限ると、33道府県(注2)で駆除が実施されている(図2-(2))。この年の駆除数は広島県が542羽(注3)でもっとも多く、これに山形、新潟、和歌山各県が300羽以上でつづき、これら4県だけで全体の半数近くを占めている。このようにアオサギの駆除の実施状況には地域的に大きな偏りが見られる。
また、地理的環境が比較的似ていると考えられる隣合った県で駆除数が極端に異なるケース(山形県と秋田県、岩手県と宮城県、長野県と岐阜県など)が見られるが、これほど大きな駆除数の隔たりは被害の多寡だけで説明できるものではなく、行政の駆除に対する考え方の違いや市民の鳥獣被害に対する許容度の違い等、地域固有の人為的な要因が多分に影響しているものと考えられる。
なお、国が公表している平成22年度分の駆除数(3,412羽)は、今回、各自治体への個別問い合わせで得られた数値(3,375羽(注4)、表1参照)と異なるが、国の公表値は正確性に欠ける(4.(11)参照)ことから、本報告書では今回の調査で確定した数値をもとに分析を行う。
(注1)佐賀県ではアオサギのほかにサギ類として104羽を計上している。このため、この中にアオサギが含まれている場合、全体の数値が最大で104羽増える可能性がある。
(注2)「鳥獣関係統計」では33道府県とされているが、都道府県への問い合わせにより、これら以外に奈良県でも駆除が実施されたことを確認している。
(注3)広島県への問い合わせによれば、542羽のうち市町村からアオサギの種名で報告されたのは263羽で、残りは種が同定できていないことが明らかとなった。この問題については4.(11)で詳述する。
(注4)6市で364羽分の駆除数がサギ類として一括集計されているため、当該数値は0羽から264羽の間で増える可能性がある。