北海道アオサギ研究会

北海道生物多様性の保全に関する条例案への意見提出

11月5日、北海道が策定中の「北海道生物多様性の保全に関する条例(仮称)」の素案に対して意見を提出しました。これは同案に対して北海道が募集していたパブリックコメントに応じたものです。

条例案自体は従来の保全策がまとめられたもので、とくに目新しい内容は無いように思います。そして、これも従来どおり、移入種や希少種への対応が中心で、それ以外のいわゆる普通種に対する具体的な保全のビジョンが見えません。今回はこうした観点から、とくにアオサギの重要繁殖地に保護区の指定を行えるよう条項の改訂ないし追加を要望しました。以下に提出した意見の全文を掲載します。

今回の素案では、鳥獣の保護管理政策の面で普通種に対する配慮があまりに少なすぎると感じます。たとえば、希少種の場合ですと、III-4 希少種対策 59 生息地等保護区の条項に「知事は、指定希少野生動植物種の個体の生息地又は生育地等の区域を生息地等保護区として指定できるものとします。」とありますが、この類の規定は普通種に対しては全くありません。しかし、普通種であってもこの規定を適用すべきケースはあると考えます。たとえば集団繁殖を行うアオサギでは、広域地域個体群(地理的にまとまりのある場所に成立した複数のコロニーの複合体)の核となるコロニーが消滅すると、個体数が大きく変 化するとともにコロニーの再編成を余儀なくされ、その地域の個体群全体が不安定になります。さらに、これに伴うコロニーの分散移動によって、都市域に新たにコロニーがつくられ、人とのトラブルが懸念されることになります。これはアオサギにも人にも不都合な状況で、いったんこうなるとどのような保全策も後手に回らざるを得ません。こうした望ましくない事態を未然に防ぐためにも、重要な集団繁殖地は優先的に保護する必要があります。今回取り上げたのはアオサギのみですが、他のコロニー性の鳥類でも多かれ少なかれ似たような状況は考えられるのではないでしょうか。以上の理由から、特殊な生態を考慮した保全策が必要と認められる種については、たとえ普通種であっても、保全上重要と判断された繁殖地に対し「生息地等保護区」の指定を行えるよう、条項の追加を強く要望します。