アオサギの駆除実態に関する調査報告書および要望書提出
当研究会では2012年よりアオサギの駆除実態に関する全国調査を行ってきました。今回、その調査結果を「アオサギの有害駆除に係る問題点に関する報告」としてまとめ、以下の要望書とともに12月3日付けで47都道府県と環境省に提出しました。要望書は都道府県と国で以下のように内容が異なります。
To: 都道府県
アオサギの有害鳥獣駆除における許認可業務の適正化に関する要望書
ここ十数年来、アオサギの駆除数が急激に増加しています。国が公表している鳥獣関係統計によると、平成8年度に全国で8羽であった駆除数は、その後、年々増加し、平成22年度には3,412羽を数えるまでになっています。しかし、この間、国内のアオサギの生息数が急増したという報告はなく、アオサギの生息状況の変化だけでは駆除数の増加を説明しきれません。そこで当研究会では、駆除数増加の原因の一端が鳥獣管理行政にあるのではないかと考え、平成24年3月から全国の自治体を対象に聞き取り調査を行ってまいりました。この結果、アオサギを対象とした鳥獣管理には多数の看過できない問題があることが明らかとなりました。詳細については同封の報告書を御覧いただければと思います。
つきましては、以下の諸点ついて要望いたしますので、ご検討のほどよろしくお願い申し上げます。要望の内容は同報告書に「都道府県への提言」としてまとめているものと同じです。なお、自治体によってはアオサギの駆除を実施していない等、下記事項に該当しない場合もあるかと思いますが、アオサギの生息状況および被害発生状況が常に流動的であることから、今回は現時点で該当事項のない自治体にも一律に要望を行うこととしました。
アオサギを科学的に管理するためには生息状況の把握が不可欠である。駆除を行うにあたっては必ず生息状況調査を行い、駆除による個体群への影響を慎重に評価すべきである。また、アオサギは広域コロニー群単位で管理する必要があることから、生息状況は都道府県レベルで把握すべきである。
駆除申請を受けるにあたっては防除策の十分性を審査するのはもちろんであるが、申請者には行政から種々の防除法を提案し、安易に駆除に頼ることなく可能な限り防除で対応するという方針を徹底して理解してもらうべきである。また、生活環境被害等でコロニーの存在が許容できない場合は、駆除ではなくコロニーの移設を検討すべきである。
計画駆除数や駆除実績、被害金額等においてアオサギが他種とひとまとめにされている状況が見られる。これはアオサギを科学的に管理するにあたって著しく障害になる行為であり、アオサギの捕獲圧を不必要に高めることになりかねない。種を明確に区分し、異なる種を一括して扱うことのないよう関係者への周知徹底に努めるべきである。
アオサギの個体群管理を適正に行うためには、正当な科学的根拠に基づいた駆除数の設定が不可欠である。被害額など駆除数の算定根拠が示されていない申請は認めるべきではない。また、被害金額については適切に計算されていない場合も多いことから、行政のほうで具体的な審査基準を設定したり最初から行政主体で被害額の見積もりを行うなど、正確な被害額が算出されるよう審査ないし査定のしくみを整備すべきである。
予察捕獲は、アオサギの生息状況に多大な悪影響を及ぼしかねない特殊な捕獲様式であることから、計画にあたってはその必要性をとくに慎重に検討すべきである。予察捕獲を実施する以外に方法がない場合は、生息状況の事前把握はもちろん、関係者に対しては予察捕獲制度について十分に理解するよう求めるべきである。
報奨金や補助金等で金銭の授受が想定される駆除については、捕獲申請や捕獲実績の報告において金銭目的の不正が行われる可能性を否定できない。こうした案件では、提示された内容についてとくに厳格な審査を行うべきである。
アオサギの繁殖期間中の駆除(コロニーでの駆除を含む)は、法律や倫理面で問題であるとともに、科学的な鳥獣管理を事実上不可能にするものである。このため、同期間中に生じる被害については、危急に対応が必要な甚大な人的被害がある場合を除き、防除、追い払い等、捕殺以外の方法で対処し、殺傷を伴う行為は全面的に禁止すべきである。
駆除の効果を検証し、後の計画に活かすためには、捕獲実績に係るデータの適切な管理が欠かせない。駆除に係る情報をすべて保存することはもちろん、データの保管にあたっては電子媒体を用い、将来の利用に耐え得るしくみを整備すべきである。
アオサギは広域での個体群管理を必要とする種であることから、市町村単位での鳥獣管理はもとより不可能である。また、本報告で示したとおり、アオサギを対象とする鳥獣管理は多くの市町村において極めて不適切な状態にある。このため、捕獲権限の市町村への委譲は原則として行うべきではなく、すでに権限を委譲している場合はその妥当性を再検討すべきである。
To: 環境省
アオサギの有害鳥獣駆除における許認可業務の適正化に関する要望書
ここ十数年来、アオサギの駆除数が急激に増加しています。国が公表している鳥獣関係統計によると、平成8年度に全国で8羽であった駆除数は、その後、年々増加し、平成22年度には3,412羽を数えるまでになっています。しかし、この間、国内のアオサギの生息数が急増したという報告はなく、アオサギの生息状況の変化だけでは駆除数の増加を説明しきれません。そこで当研究会では、駆除数増加の原因の一端が鳥獣管理行政にあるのではないかと考え、平成24年3月から全国の自治体を対象に聞き取り調査を行ってまいりました。この結果、アオサギを対象とした鳥獣管理には多数の看過できない問題があることが明らかとなりました。詳細については同封の報告書を御覧いただければと思います。
今回の調査は基本的に都道府県および市町村の鳥獣管理行政に焦点を当てたものですが、一部の問題は国にも同様に当てはまるとともに、国に率先して取り組んでいただきたい課題もあります。つきましては、それらを要望としてまとめましたので、ご検討のほどよろしくお願い申し上げます。
平成19年1月に告示された鳥獣保護法の指針以降、駆除を目的とした捕獲を許可する際の「特に慎重に取り扱う」べき対象種からアオサギが除外されている。この措置は計画性のない安易な駆除を助長し、結果としてアオサギの被害を拡大している可能性がある。アオサギは明確な個体群構造を示す種であることから、駆除による影響が個体群レベルで顕在化しやすく、個体群構造の不安定化がさらなる被害をもたらす場合が多い。このため、アオサギの鳥獣管理は個体群構造を理解した上で周到な計画に基づいて行うことが不可欠である(詳細は報告書4.(11)参照)。以上の理由により、アオサギを「特に慎重に取り扱う」べき種へ変更することを求める。
アオサギの繁殖期間中の駆除(コロニーでの駆除を含む)は、法律、倫理の面で問題であるばかりでなく、科学的な鳥獣管理を事実上不可能にするものである(詳細は報告書4.(9)および(10)参照)。このため、同期間中に生じる被害については、危急に対応が必要な甚大な人的被害がある場合を除き、防除、追い払い等、捕殺以外の方法で対処し、殺傷を伴う行為は全面的に禁止すべきである。このことを法ないし指針に明示することを求める。
捕獲実績は、駆除の効果を検証し、後の管理計画に活すことで初めて意味をもつものである。ところが、国は都道府県ごとの駆除数のデータを収集しているのみで、過去のデータが十分に活用できる状況になっていない。記録の保存については、駆除数だけでなく駆除に係るすべての情報を対象とすべきであり、また、それら情報に個々の自治体が常時アクセスできるよう、全国のデータをクラウド上で一元管理すべきである。以上の点を考慮した情報管理システムの整備を求める。
当研究会からの要望は以上です。つきましては、ご多忙のところ誠に恐縮ですが、上記要望についてご回答下さいますようよろしくお願い申し上げます。
【追記】ひとつめの要望で、報告書4.(11)とあるのは報告書5.の間違いでした。訂正してお詫びします。