釧路湿原コロニー
釧路市安原、鶴居村との境付近の釧路湿原中央部にあったが現在は放棄されている。コロニーはハンノキ林にあり、その周辺は低層湿原が広がっている。
1988年6月24日に釧路市立博物館の橋本正雄氏らが行った調査では、ハンノキ260本に372巣(うち188巣でヒナを確認)と落巣9個を確認している(橋本ほか 1988)。このほか、冬季の調査として、1982年3月16、17日に、ハンノキ103本に113巣と落巣53個(橋本 1985)、1985年10月30日に、ハンノキ151本に189巣と落巣11個(橋本 1986)、1992年2月15日に、ハンノキ142本に194巣と落巣4個を確認している(橋本ほか 1992)。
2002年6月5日に釧路湿原の西岸からコロニーのあった辺りを観察したが、営巣の気配は全く無かった。また、2003年2月11日にコロニーのあった場所を訪れたところ、ハンノキの樹高は最大で18m程度で10m以下の木も多く枯死木が目立った。巣の位置は低く、地上約5mにつくられている巣もあった。
このコロニーは、釧路湿原ボランティアレンジャーの会の沢田正雄氏らによって、1995年以降毎年2月11日に営巣数がカウントされてきた。それによると、1994年192巣(1995年2月の調査、以下同様)、1995年170巣、1996年164巣、1997年145巣、1998年124巣、1999年79巣、2000年55巣、2001年42巣、2002年17巣、2003年0巣となっている。なお、2000年には新たな巣がつくられていることから、2000年までは確実に営巣していたようである。橋本氏によると、1990年より営巣木の枯損倒壊が急速に進行し営巣面積が縮小したことから、営巣木の枯損倒壊が放棄の原因ではないかという。また、1993年の釧路沖地震で湿原内を通る堤防道路が壊れて嵩上げ工事をした結果、周辺環境が変わり餌場としての魅力が無くなったのではないかとも推測している。このコロニーは1976年に橋本氏により発見されたもので、当時70巣以上が確認されている(橋本 1985)。また、釧路湿原西部の大楽毛にあったコロニーが1975年を最後に消滅していることから、ここのコロニーは大楽毛から移動したものと考えられている。
参考文献
橋本正雄 1985 釧路湿原、厚岸町におけるアオサギ営巣地について 釧路市立博物館紀要 第10輯 19-27
橋本正雄 1986 鳥類に対する影響 釧路湿原の火災にかかる自然環境影響緊急調査報告書 58-67 北海道自然保護協会
橋本正雄、加藤春雄、富岡辰先 1988 釧路湿原のアオサギ・コロニー 釧路市立博物館館報 312 117-119
橋本正雄、加藤春雄、杉山伸一、深沢敬、橋場貴幸 1992 北海道東部、釧路湿原におけるアオサギの営巣についてⅡ 釧路市立博物館紀要 第17輯 37-46