北海道におけるアオサギの生息状況に関する報告

Status Report of Grey Herons in Hokkaido

植苗コロニー

コロニー付近の森(画面奥の山)

苫小牧市植苗にあり、ウトナイ湖畔からは約1km西の丘陵地に位置する。コロニーの北側はオタルマップ川の流れる湿原が広がり、南にも小規模ながら湿地がある。コロニーは丘陵の上部平坦地にあり、周辺には細く樹高の低い均一なミズナラ林が広がる。

2001年12月2日から4日にかけて行った調査では、ミズナラ121本、イタヤカエデ9本、キハダ3本、ハリギリ3本、シラカンバ2本、ホオノキ、ケヤマハンノキ、キタコブシ各1本、不明(枯死木)5本の8種146本に、合計347巣を確認した。林床にはフッキソウ、ササ、オシダなどが見られた。営巣面積は約3,600m2であった。コロニー内で樹冠に達している木はほとんど使用されており営巣密度は高かった。

このコロニーは1982年にウトナイ湖サンクチュアリの職員らにより発見されている(大畑 1990)。当時は明野コロニーが消滅間近の頃であり、明野のアオサギが移動して当コロニーが作られた可能性が高い。なお、このコロニーは苫小牧市の依頼で鳥獣保護員の宮崎正寛氏が秋期に継続して巣数を調べている。その結果を記した苫小牧市の資料によると、コロニーの発見された1982年が37巣で、以後1996年の316巣まで概ね増加傾向にあるが、その翌年の1997年には一気に539巣となり、この年に限り異常な増加が見られている。この1997年は野幌コロニーが消滅した年であり、野幌のアオサギが当コロニーに移動した可能性が高いと考えられる。なお、巣数はこの年がピークで、翌1998年には428巣まで減少し、その後も2003年の129巣まで概ね減少傾向にある(1982年から2003年までの巣数は以下の通り。37巣、85巣、108巣、127巣、144巣、158巣、210巣、197巣、258巣、270巣、264巣、291巣、284巣、316巣、359巣、539巣、428巣、473巣、395巣、324巣、165巣、129巣)。また、2004年11月11日にコロニーを訪れたところ、確認できた巣はわずか24巣であった。この年は台風18号の被害が大きく、例年にくらべ落下した巣は多いと思われるが、ここ数年で巣数が急速に減少していることを考慮すると、このコロニーはすでに放棄されているか放棄直前である可能性が高いと思われる。

なお、このコロニーは幅約300mの帯状の国有保安林の中にあるが、その周囲は極めて細かく分割された民地になっている。また、このコロニーの上空は民間航空機や自衛隊のF15戦闘機等の飛行コースになっており、数百mの低空を航空機が爆音をたてて頻繁に飛び交っている。

参考文献
大畑孝二 1990 ウトナイ湖の鳥類保護に関する提言 Strix 9: 191-199

コロニーの位置(大きな地図で見る
コロニーの周辺環境
コロニーの内部