北海道におけるアオサギの生息状況に関する報告

Status Report of Grey Herons in Hokkaido

江別コロニー

コロニーの全景

江別市元江別、世田豊平川右岸の河畔林にある。コロニーから川を隔てて北側は工業団地である。また、コロニーの東から南にかけては住宅地、西には牧草地が広がる。河畔林は全て広葉樹で、高さ約20m、斜度約35度の北西に面した斜面上にある。斜面を登り切ったところには史跡公園がある。コロニーから下流側へ約50mのところを道道128号が走っている。コロニーから対岸の土手までは約20m離れているが、川幅は2mほどで、河跡湖のため流れはない。

2002年11月23日に行った調査では、ケヤマハンノキ9本、ハルニレ3本、ヤナギ類3本、ミズナラ2本、不明2本の4種19本に、合計57巣を確認した。コロニー内の低木には、エゾニワトコ、ツリバナ、オオカメノキなどが見られた。林床はササとトクサが優占していた。林にはツル植物が繁茂し、木の上部にまで達しているツルも多かった。営巣面積は約2,800m2であった。

なお、2002年4月18日にコロニーの対岸から観察したところ101巣(うち92巣で営巣)を確認している。同様に、2003年5月7日には117巣(うち107巣で営巣)、2004年5月7日には103巣(うち102巣で営巣)を確認している。

日本野鳥の会江別支部の松山潤氏によると、このコロニーで最初に営巣を確認したのは1997年であるという。この年は南約11kmにあった野幌コロニーが放棄された年であり、野幌のアオサギの一部が移動してきた可能性が高い。また、江別市によると、1997年当時は3本の営巣木に15巣を確認したという。

このコロニーの周辺では、十数羽から30羽程度のアオサギが毎年越冬している。越冬時の餌場は特定できていないが、コロニーの下流1km弱のところで川に工場排水が流れ込んでおり、冬でも水面が結氷しない一角があることから、ここが休息の場としてよく利用されている。松山氏によると、ここでの越冬を最初に確認したのは1994年頃だという。

このコロニーには、山口県宇部市の常磐公園を逃げ出したペリカン1羽(名前はウェンディ、右脚に緑のリング)が2000年以降毎年飛来している。ペリカンはコロニーの全面にあるツルの絡まった木に飛来し、普段はアオサギに干渉することはないが、状況によってはアオサギの巣に入り込んでしまうなど、まれにアオサギが被害を被ることがある。

このコロニーは市街地に近くコロニーまでのアプローチが容易な上、川の対岸から間近に観察でき、しかもペリカンが見られることもあって、週末などは観察や写真を目的にした人が多く訪れる。ここのアオサギは他のコロニーのアオサギに比べればそうした状況に比較的慣れているようであるが、時には人が川まで下りたり背後からコロニーに侵入したりする場合もあり、アオサギの繁殖への悪影響が懸念されている。なお、以前は対岸の土手に車を乗り入れることができたが、江別市ではアオサギの営巣に配慮して、土手へ至る道にゲートをつくり車の乗り入れを禁止する措置をとっている。同時に、コロニーへ近付きすぎないよう警告する看板を数カ所に設置している。また世田豊平川には、地元の養魚業者がアオサギにエサを供給する目的で、2002年頃より毎年6月頃に1万匹のドジョウを放流している。

コロニーの位置(大きな地図で見る
コロニーの周辺環境
コロニーの内部