ペンケ沼コロニー
豊富町豊徳、サロベツ原野のペンケ沼北岸にある。湖岸からコロニーまでは約100mで、コロニーのさらに150mほど北には別の小さな沼がある。コロニー付近の植生はケヤマハンノキやヤナギ類が優占する広葉樹林である。コロニーの東約400mには下エベコロベツ川が流れ、その河川跡がコロニーの南端を通っている。この河川跡はほとんど干上がっているが、コロニー付近ではわずかに水が溜まっている。
2003年11月2、3日に行った調査では、ケヤマハンノキ62本、ヤナギ類22本、ニワトコ1本に、計253巣を確認した。営巣木はほとんどが10m前後だったが、中には5mのニワトコやヤナギ類も見られた。林床の草本にはトクサ、シャク、エゾイラクサなどが見られた。営巣面積は約3,300m2であった。
豊富町鳥獣保護員の天野氏によるとこのコロニーは1982年頃には既に成立していたという。また、1991-92年の冬には、ハンノキやヤチダモなどに12巣を確認したということである。同氏はその後2001年にも営巣を確認している。このコロニーについては、それ以降繁殖期の情報はないが、2003年11月の現地調査では林床にアオサギの糞が見られたことなどから、少なくとも2003年までは繁殖が継続されているものと思われる。
このコロニーは利尻礼文サロベツ国立公園内にある。コロニーへアクセスするための一般的なルートはないが、舟を利用すればサロベツ川から下エベコロベツ川を遡ってペンケ沼へ出られる。陸路でアプローチするには、砂利道の終点から下エベコロベツ川沿いに1時間半ていどササを漕ぐ必要がある。このため、人によるコロニーへの影響はほとんど無いと思われる。しかし、2003年11月の現地調査では、コロニーおよびその周辺にビニール製のゴミが多数散乱しているのを確認している。また、コロニーの下には漁業用のネットやルアーも落ちており、人間の影響が皆無というわけではない。なお、ペンケ沼は下エベコロベツ川からの土砂の流入によって水面面積が減少しており、これを阻止するための対策が、環境省主体で現在実施中の自然再生事業の中に組み込まれている。