4.(8) 報奨金に係る問題
アオサギの駆除にあたり市町村では猟友会に報奨金(もしくは奨励金)を支払う場合がある。また、市町村とは別に漁協が支払う場合も多い。いずれの場合も報奨金に相場はなく、今回の調査では少ないところで1羽あたり200円(北海道A市)、多いところで5,000円(和歌山県B市、同C市、鳥取県D市)と金額はまちまちであった。こうした報奨金制度はハンターの意欲を高める効果はあるが、ハンターのモラルが低い場合には鳥獣管理の障害となりかねない。
報奨金は捕殺したアオサギのくちばしと引き換えに受け取るしくみになっているところが多い。これはハンターに悪意があれば容易にごまかすことのできる制度である。和歌山県B市によると、たとえばカワウの場合、くちばしの提供を求める自治体と脚の提供を求める自治体が別にあることを利用し、1羽のカワウで2羽分の報奨金を受け取るケースがあったという。カワウでこうした不正がある以上、アオサギで同様の不正があっても不思議ではない。
このように現物と引き換えに報奨金を受け取る制度については他にも問題が多い。たとえば、熊本県E市によると、銃で撃ったアオサギが川に落ちて回収できない場合は、くちばしなどの証拠が得られず漁協からの報奨金がもらえないため、ハンターが実績として報告しないことも考えられるという。また、広島県F市の場合は、防止計画に「場所によっては流されて、捕獲出来ない(実績にならない)有害鳥獣もある」と明記している。これらの事例からは、回収できない場合に報告しないことを当然視する風潮がうかがわれる。こうした状況下では、未回収個体を含めた実質的な駆除数が計画駆除数(あるいはハンター一人当たりの駆除数上限)を超える可能性を否定できない。言うまでもなく、駆除実績の記録は将来の管理計画に活かすことで初めて意味をもつものである。管理計画を科学的に策定するために必要なのは、実際に捕殺した羽数であり、手元に回収した死体の数ではない。このことを今一度ハンターに周知徹底するとともに、行政においても記録の重要性を再確認すべきである。
報奨金については、ハンターではなく報奨金を支払う漁協に問題があるケースも想定される。漁協によっては、報奨金の資金として国から内水面漁業振興対策事業(注1)の補助を受けている場合がある。この補助金は、本来、カワウ対策が目的でありアオサギは対象とされていないが、駆除の現場においてカワウとアオサギがひとまとめにされがちなのは4.(3)で述べたとおりである。よほど監査が厳しくない限り補助金がアオサギの駆除に流用される可能性は否定できない。
さらに、こうした補助金は漁協の金儲けの手段として利用される懸念もある。ある自治体担当者の話によると、漁協によっては駆除申請に正当な理由がないにもかかわらず、強引に捕獲許可を求めてくることがあるという。こういったケースでは、申請の目的が被害軽減ではなく補助金の確保にある可能性を十分に疑ってみる必要がある。鳥獣管理の場において、被害の防除・軽減とは関係のない理由で鳥獣の命が奪われることは決してあってはならない。金銭の絡む問題が背景に想定される場合は、申請理由の正当性についてとくに厳格な審査を行うべきである。
(注1)カワウの駆除は「内水面漁業振興対策事業」のうち「健全な内水面生態系復元等推進事業」に含まれる補助事業で、事業内容は「地域間の連携による推進体制の整備やその下での広域的なカワウの生息状況調査、追い払い及びその捕獲、外来魚の駆除、ドライアイスを活用したカワウの繁殖抑制や効果的な外来魚駆除、都市との交流を通じた啓蒙活動等の内水面生態系の復元等に資する活動を集中的に実施する取組を支援する。」とされている。補助率は2分の1、事業実施期間は平成15年度から平成26年度までである。また、当該補助金事業の実施主体は各都道府県の内水面漁業協同組合連合会等の団体であり、これらの団体を通じて各漁協へ補助金が配分されることになる。