アオサギの有害駆除に係る問題点に関する報告

Report on the Problems of Grey Heron Control in Japan

6. 都道府県への提言

本報告書では、「4. アオサギの駆除に係る問題と問題解決のための提案」の各項において、個々の問題点ごとに当研究会としての所見を述べてきた。以下はそれらの所見を簡潔に整理し直したものである。

(1)生息状況調査の実施

アオサギを科学的に管理するためには生息状況の把握が不可欠である。駆除を行うにあたっては必ず生息状況調査を行い、駆除による個体群への影響を慎重に評価すべきである。また、アオサギは広域コロニー群単位で管理する必要があることから、生息状況は都道府県レベルで把握すべきである。

(2)防除の徹底

駆除申請を受けるにあたっては防除策の十分性を審査するのはもちろんであるが、申請者には行政から種々の防除法を提案し、安易に駆除に頼ることなく可能な限り防除で対応するという方針を徹底して理解してもらうべきである。また、生活環境被害等でコロニーの存在が許容できない場合は、駆除ではなくコロニーの移設を検討すべきである。

(3)種の区分の徹底

計画駆除数や駆除実績、被害金額等においてアオサギが他種とひとまとめにされている状況が見られる。これはアオサギを科学的に管理するにあたって著しく障害になる行為であり、アオサギの捕獲圧を不必要に高めることになりかねない。種を明確に区分し、異なる種を一括して扱うことのないよう関係者への周知徹底に努めるべきである。

(4)適正な駆除数の設定

アオサギの個体群管理を適正に行うためには、正当な科学的根拠に基づいた駆除数の設定が不可欠である。被害額など駆除数の算定根拠が示されていない申請は認めるべきではない。また、被害金額については適切に計算されていない場合も多いことから、行政のほうで具体的な審査基準を設定したり最初から行政主体で被害額の見積もりを行うなど、正確な被害額が算出されるよう審査ないし査定のしくみを整備すべきである。

(5)予察捕獲の必要性の再検討

予察捕獲は、アオサギの生息状況に多大な悪影響を及ぼしかねない特殊な捕獲様式であることから、計画にあたってはその必要性をとくに慎重に検討すべきである。予察捕獲を実施する以外に方法がない場合は、生息状況の事前把握はもちろん、関係者に対しては予察捕獲制度について十分に理解するよう求めるべきである。

(6)不正な申請に対する審査の厳格化

報奨金や補助金等で金銭の授受が想定される駆除については、捕獲申請や捕獲実績の報告において金銭目的の不正が行われる可能性を否定できない。こうした案件では、提示された内容についてとくに厳格な審査を行うべきである。

(7)繁殖期間中の駆除の禁止

アオサギの繁殖期間中の駆除(コロニーでの駆除を含む)は、法律や倫理面で問題であるとともに、科学的な鳥獣管理を事実上不可能にするものである。このため、同期間中に生じる被害については、危急に対応が必要な甚大な人的被害がある場合を除き、防除、追い払い等、捕殺以外の方法で対処し、殺傷を伴う行為は全面的に禁止すべきである。

(8)捕獲実績の記録および保存の適正化

駆除の効果を検証し、後の計画に活かすためには、捕獲実績に係るデータの適切な管理が欠かせない。駆除に係る情報をすべて保存することはもちろん、データの保管にあたっては電子媒体を用い、将来の利用に耐え得るしくみを整備すべきである。

(9)市町村に対する捕獲権限委譲の見直し

アオサギは広域での個体群管理を必要とする種であることから、市町村単位での鳥獣管理はもとより不可能である。また、本報告で示したとおり、アオサギを対象とする鳥獣管理は多くの市町村において極めて不適切な状態にある。このため、捕獲権限の市町村への委譲は原則として行うべきではなく、すでに権限を委譲している場合はその妥当性を再検討すべきである。

もくじ

・ はじめに
1. 調査の概要
2. アオサギの置かれている現状
3. アオサギ駆除の現状
4. アオサギの駆除に係る問題と問題解決のための提案
5. アオサギの管理指針
6. 都道府県への提言
・ 図表
・ おわりに

リンク